綿はどうして縮んでしまうの?
綿製品を洗濯したら、縮んでしまった...という経験は誰にでもあると思います。
「綿は縮んでしまうもの」それは皆既知の事実です。実際、オーダーシャツの採寸をする際も縮みを考慮して数字を決めます。
だけど、どうして綿は縮んでしまうのでしょうか?
最小限に抑えることはできないのでしょうか?
今日は綿の縮む原理について、お話ししたいと思います。
そもそも、綿というのはハイビスカスと同じ葵科の植物で、美しい黄色の花を咲かせます。やがて花は紅色に変わり、数日で落下した後、子房が熟し、コットンボールと呼ばれる綿の実になります。コットンボールは、長い木綿繊維(リント)と、短い地毛(リンター)からなっていて、その長い方を紡いだものが「綿糸」です。短い地毛は溶解してキュプラ(再生繊維)などの原料として使われます。
その、綿繊維を電子顕微鏡で見ると、1本1本はよじれたリボン状をしています。断面はソラマメのような形をしていて、真ん中にはルーメンと呼ばれる穴が空いていて、つぶれたストローのような形です。
よじれによって繊維同士が絡まりやすいため、紡糸しやすいといった長所につながります。
この構造によって次のような効果が生まれます。
・肌触りが良いー繊維の先端が丸く、肌への刺激が少ない。
・水に馴染みやすい(親水性)ー植物が水分を吸収するように、汗をいっぱい吸い込む(吸湿&吸水性に優れる)。
・保湿性に優れるー繊維の芯が空洞だから軽く、しかも空気の層によって保湿性に優れている。
・清潔ー水に濡れると強くなる(水分を吸収すると繊維強度が10〜15%増)ので家庭洗濯しやすい。
綿繊維の構造がわかったところで、本題の縮む原因です。
縮むのには、2つの理由があります。
①緩和収縮
通常、綿に限らず織物は、経(タテ)糸を引っ張ってそこに緯(ヨコ)糸を杼(ひ・シャトル)を使って織り上げられます。このことから、当然経糸の方にテンション(張力)がかかった状態になります。このため、この張力を緩和させるための縮絨(しゅくじゅう)という工程が必要になります。この縮絨が不十分だと、洗濯などで水分を吸収すると、引っ張られていた糸が自然な長さに戻ろうとし、その結果、縮みが起こることになります。これを、緩和収縮といいます。
②膨潤収縮
親水性の繊維には、「水を吸うと膨れる」といった性質があります。水を吸い込んだ綿繊維は、繊維の直径が20%近く大きくなり、太くなった糸は、長さが短くなります。その状態のままで乾くと、「衣類が縮んだ」ということになるのです。
つまり、生地を裁断する前の準備段階において、生地に水通しすることで、生地にかかったテンションを弱めてあげなければいけないのですが、この工程を省くと、製品ができあがってお客さんの手元に渡り、お客さんが自宅でお洗濯した時にテンションが緩められる(綿本来の自然な長さに戻る)=縮んでしまうのです。
これは、明らかに製造側に責任があります。おうちで1回しか洗っていない、しかも、洗濯表示通りに洗ったのに縮みが激しい場合、①の理由があげられます。
そう考えると、あまり安すぎるオーダーシャツは、そこまでしているだろうか?と疑問符がついてしまいます。いくら仕上がりの形を綺麗に見せられても、大事なのは、着続けられることです。
一方②の理由は、天然繊維であるがゆえ、当然の性質で、避けられないもの。ただ、これは、洗濯して干す時に、ある程度しっかり伸ばしてあげることで、縮みを最小限に抑えることができると思います。単純ですが、以外と大事なんです。
綿が縮んでしまう理由、ご理解頂けましたでしょうか?
オーダーシャツ屋さんを選ぶ参考になれば幸いです!
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